株式会社ニシハタシステム

Newsweekに掲載されました

防災システムの普及を促進し、広く社会に貢献する

日本は地震大国だ。2011年3月に東北地方に甚大な被害をもたらした東日本大震災以降も、長野、熊本、大阪、北海道など全国各地で震度6弱以上の地震が発生しており、気象庁のデータベースによるとその数は今日までに20回を優に超えている。今後も巨大地震の発生が予測されるなか、「当たり前の防災を体現する」を企業理念に掲げ、実践する会社がある。

大手飲料メーカーとの提携で需要を拡大

大阪府泉佐野市に本拠を置く株式会社ニシハタシステムは、事業者向けの緊急地震速報受信システムをはじめとする各種防災設備の販売及びリースなどを行う会社だ。「2004年の創業からしばらくは通信インフラ事業をメインに展開していたのですが、新たな事業の可能性を探るなかで緊急地震速報というものの存在を知りました」と、同社代表取締役の西畑恭二氏は振り返る。

地震はP波と呼ばれる小さな揺れの後、S波と呼ばれる強い揺れが来る。気象庁が発報する緊急地震速報はこのP波をとらえ、自動計算で地震の規模や震源地を予測し、大きな揺れのS波が来る前に知らせるものだ。同社が取り扱う緊急地震速報受信機「地震の見張り番タッチ」は11インチのタッチパネルで震源地の位置情報も画面上でわかり、津波・火山警報・メール配信機能にも対応した優れものである。

「当時は緊急地震速報の運用が始まったばかりでしたが、その有用性からいち早く販売代理店として名乗りをあげました。しかし、なかなか思うように普及が進みませんでした」
その理由はコスト面だ。緊急地震速報の発報から強い揺れが到達するまでの時間は数秒、長くても数十秒程度と極めて短い。そのわずか数十秒の価値を理解し、そのためにイニシャルコストやランニングコストをかけられる企業は、当時の経済状況もあってか、少なかったという。

どうしたらこの緊急地震速報受信システムを普及させることができるのか。何度も繰り返し考えるなかで西畑氏の頭に浮かんだのは携帯電話だった。「携帯電話が爆発的に普及しはじめたのは端末が0円になってから。それと同じことができないかと思い、受信機を0円にするためにはどうしたらいいのかを考え続けました。その末にひらめいたのが『災害救援ベンダー』だったのです」

災害救援ベンダーとは地震などの災害が発生した際に被災者に対して無償で飲料を提供できる自動販売機だ。各大手飲料メーカーがCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の活動の一環として設置を進めている。西畑氏は災害救援をCSR活動として行う飲料メーカーであれば、緊急地震速報受信システム普及のために協賛してくれる可能性があるのではないかと考えたのだ。